先輩メッセージ
(卒業生VOICE)

救急救命学科
Prehospital Care

過酷な現場状況でも
かならず救い出すという
強い気持ち。
人命救助の「最後の砦」として
責任を全うする。

相模原市消防局 相模原消防署警備課本署 特別高度救助隊 井上拓実 さん

相模原市消防局 相模原消防署警備課本署
特別高度救助隊

井上 拓実 さん 救急救命学科2012年卒業

メッセージ

緊迫した現場状況でも冷静に判断し、
連携を図って救助活動を遂行する。

緊迫した現場状況でも冷静に判断し、連携を図って救助活動を遂行する。

湘央学園卒業時に救急救命士国家試験に合格し、相模原市消防局に入局しました。現在は特別高度救助隊員として人命救助の最前線で働いています。特別高度救助隊は、相模原市を含む政令指定都市に設置が義務付けられており、大規模災害やCBRNE(化学、生物、放射性物質、核、爆発物)災害など特殊な災害に対応するために編成された部隊です。湘央学園在学時に取得した「危険物取扱者」や「毒物劇物取扱者」などの資格が役に立っています。通常時は相模原市内の火災や交通事故、軌道(鉄道)、水難、建物の事故などに出場して人命救助を行いますが、特別高度救助隊は市内だけでなく要請があれば緊急消防救助隊として、国内の様々な災害にも出場する任務があります。

当然ながら人命救助は、要救助者を早期に救出するため一刻を争います。そして救助現場の状況は事案によって様々に異なります。例えば火災時に人が建物内に閉じ込められている場合、火災状況以外にも建物構造、周辺の障害物、要救助者は建物の何階に居るか、年齢や負傷状況など、あらゆるケースを考慮して対応しなければなりません。緊迫した状況下で迅速かつ適切に救助活動を行うには、救助隊員の連携が不可欠です。強い連携を保つとともに、情報共有能力を培います。救助隊員は当直中24時間同じメンバーで訓練し、食事を摂り、入浴するなど集団で生活します。その間はマイペースな行動は許されません。災害指令時の一刻も早い出場に備えて常に緊張感を維持します。トイレやシャワー中でも気を張っていますね。

医療知識をもつ救助隊として、
現場で重要な任務を託される
救急救命士。

湘央学園で学び、救急救命士の資格を取ったのが、私のキャリアにおいて非常によい選択だったと思っています。「救助隊員(消防隊員)」としても「救急隊員」としても活動できるため、現場での任務範囲が広くなります。例えば、瓦礫の中やマンホール、高所や低所など危険な現場へは救助隊員が進入します。私は救助隊員として活動するとともに、救急救命士として現場で傷病者の観察、処置を行うことができます。それが一つの強みです。

また、救助現場での救出指示ができるのも救急救命士の特長だと思っています。現在所属する特別高度救助隊員では、私が唯一の救急救命士です。そのため救助現場では、救命を第一と考えて要救助者の早期救出を優先すべきか、処置を行ってから救出するか、絶対安静の慎重な救出が必須であるかなどの判断が私に求められます。救助隊員であり救急救命士でもあることで、こうした現場の重要な判断を任されることにもやりがいを感じます。

相模原市消防局では救急救命士の資格取得を推進しています。入局後に取得することも可能ですが、受験資格を得るための研修期間や救急隊員としての経歴条件があり簡単ではありません。私も消防士を目指していた頃、父親の友人で消防職員をされていた方から救急救命士の資格を取るよう勧められましたが、消防職員を目指す皆さんにもぜひ資格取得を勧めたいですね。

一人でも多くの命を助けたい。
将来は海外の大規模災害の
救助にあたるのが夢。

一人でも多くの命を助けたい。将来は海外の大規模災害の救助にあたるのが夢。

これまで数々の困難な救助活動を経験してきました。10時間以上の過酷な山岳救助、航空隊員とともにヘリに同乗しての救助活動、1メートル以上の積雪で車が進入できない状況での遭難救出。他にも軌道事故や水難事故では、重篤な傷病を負った方の救助も遂行しました。多くの人命を救えたことは誇りであり、救急救命士になってよかったと思っています。一方で助けることができなかった命もあります。救助に全力を尽くしても、やはり悔しさが残ります。不幸にも事故や遭難、罹災などによって生命の危機に陥り、一刻も早い救助が必要になっている人を一人でも多く助けたい。どんなに困難な状況下でも絶対に救うという強い気持ちで、人命救助の「最後の砦」として任務を果たしたいと思っています。そのために救急救命士の資格を持った救助隊員として求められる精度をもっと上げていきます。

将来の目標は、実現が相当難しい夢なのですが、IRT*(国際消防救助隊)に参画して国際貢献を経験したいという思いがあります。IRTは海外で大規模災害が発生した際、要請により被災地に赴き、救助活動を遂行する部隊のことで、各自治体の国際消防救助隊登録消防本部の救助隊から編成されます。現在、相模原市内からは6名の隊員が登録されています。最終的にチームの一員になるには、そこからさらに選抜された者が特別な訓練を受けます。それを一つのモチベーションとして、日々の救助に力を尽くしていきます。


※IRT:International Rescue Team

わたしの1日の仕事

7:30 登庁 着替え、準備(勤務表、食事献立)
9:00 引き継ぎ 体操、車両・資機材点検
ここから災害対応(出場指令に備える)
10:00 訓練、立入検査、訓練指導
12:15 昼食
13:00 訓練、立入検査、訓練指導
18:15 夕食
19:00 車両・無線点検
23:00 仮眠
   
6:10 起床、朝食
8:00 庁舎・車両清掃
9:00 引き継ぎ
10:00 退庁
わたしの1日のしごと

INTERVIEW

Q1 救急救命士になろうと思ったのはいつ頃、
どんなきっかけですか?

最初は消防士(救助隊)への憧れがありました。小学校の時ですね。父親の友人に消防職員の方がいて、時々消防の仕事のことを話してもらったり、消防署に遊びに連れて行ってもらいました。やっぱり災害時の救助活動はかっこいいと思いました。救急救命士のことを詳しく知ったのは、もっと後になってからです。

Q2 湘央学園に進学したのはなぜですか?

高校在学中に消防士の採用試験を受けましたが、失敗しました。中学、高校とバレーボールに全力で打ち込みました。高校は全国制覇も狙える強豪校でしたから練習漬けの毎日で、勉強はあまりやっていませんでした。学力が足りず、準備不足でしたね。その後大学に進むか、就職浪人するか、公務員専門学校に行くか色々悩んだのですが、先ほど話した父親の友人から救急救命士のことを聞いたんです。「救助隊員を目指すなら救急救命士の資格は武器になるから拓実君も挑戦してみたらどうだ」と。その時、湘央学園を勧められました。質の高い授業、国家試験の高い合格率、何より数多く卒業生が即戦力として現場で働いている実績が素晴らしいと思いました。実際に見学に行ったところ、救助のデモを行ってくれた先輩たちのやる気、迫力に圧倒され、迷うことなく湘央学園に決めました。

Q3 湘央学園の3年間はどんな学生生活でしたか?

毎日ハードで厳しく、勉強も大変でしたが充実した楽しい3年間でした。先生方には叱咤激励も受けましたが、私たちに対して真剣に熱い心でご指導してくださっていたと思います。私も救急救命士になる夢を叶えるために精一杯取り組みました。入学時、医療の知識はほぼ皆無。その勉強は自分にとって新たな挑戦でした。スタートから全力で頑張って一番になるという強い思いで臨みました。勉強はもちろんそうですが、消防士になるには体力測定も基準をクリアしなければならないので、毎日の走り込み、腕立て、懸垂を欠かしませんでした。入学後、早いうちから結果が出たため楽しくなっていきました。

Q4 特に記憶に残っている思い出は何ですか?

たくさんあります。特に実習が思い出深いです。県内の消防本部での救急車同乗実習や、近隣の大学病院に往訪しての実習などです。解剖実習で大学病院を訪れた際、ご遺体の検体に立ち会ったのが強く記憶にあります。救助隊員は業務遂行上、ご遺体に接することは避けられず「慣れ」はありますが、学生の時はとても緊張もしました。他には、東日本学生救急救命技術選手権に選抜チームとして出場したのが思い出です。同じ目標に向かい、ともに学んだ仲間と絆を深めたのが一番ですね。一生の仲間だと思っています。各地の消防本部や医療機関で活躍する彼らとは今もつながっていて搬送先や県内の研修会などでもよく会います。時々飲み会もやりますね。ちなみに私の妻も消防士で、湘央学園の同窓生です。

Q5 国家試験に合格するために
どれくらい勉強しましたか?

資格試験に合格するためにとにかく時間を惜しんで勉強しました。行きの電車内30分、学校で6時間、放課後1時間、帰りの電車30分、帰宅後1時間。通しにすると毎日平均9時間から10時間は勉強したことになりますね。でも目標を達成するための勉強なので苦痛ではなく、むしろ楽しくて仕方なかったです。ただ医療分野の勉強は高校までに教わることのない内容のため予習したくても、難しくて自分ではできません。そこで教わったことは絶対に定着させる意気込みで復習に徹しました。月曜から金曜までびっしり勉強するので、毎週金曜日は学校の仲間と飲みにいきました。

Q6 勉強で特に苦労したことはありましたか?

高校まであまり勉強していなかったので公務員試験の一般教養対策が、思いのほか苦労しました。湘央学園では救急救命士の専門的な勉強が中心となるので、私にとって一般教養はウイークポイントだったんです。先生方も丁寧にサポートしてくださってある程度レベルは上がっていきましたが、それでも不安があったのと専門分野は他人に負けないくらい自信はあったのに一般教養で落とされたら悔しいので、2年生の1月から3年生の9月まで、学校の後に夜間の公務員専門学校に通って対策しました。これは有効だったと思います。

Q7 後輩へオススメの勉強法はありますか?

これは私が実際にやっていた方法です。皆さんも教科書の内容で覚えなければならない重要な部分に蛍光マーカーでラインを引きますよね。その時、私は文章の主語の部分と、述語の部分でマーカーの色を変えていました。例えばですが、「心臓は、握りこぶしくらいの大きさで、血液を肺と心臓に送り出すポンプである。」という文章があるとします。私は、主語の「心臓は」を赤色のマーカー、それ以降の文章を緑色のマーカーで塗っていました。これによって心臓は「握りこぶしくらい」「血液を送り出すポンプ」とポイントを整理できるわけです。授業が終わる度にこの作業を行うことで試験前は見直すだけで覚えられました。

Q8 最後に後輩へのメッセージをお願いします。

毎日地道に勉強を続けることが、やはり夢に近づく一番確実な方法だと思います。苦しい時もあるかもしれませんが頑張って欲しいです。それとボランティアや課外活動などに積極的に参加すると自分の強みになります。私も在学時、東日本大震災の救護ボランティアなどに参加しました。それが面接の時の自己PRにつながったと思います。救急救命士は人のため、社会のために働ける誇りとやりがいの持てる仕事です。救助した人、ご家族に「ありがとう」と言われたら最高の気持ちになります。そんな感動を皆さんにも味わってほしいと思います。

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